雪止みを待つ 億年前の死骸を燃やして
雲梯にからまる幸福とか 鉄棒に染み付く憂鬱とか
幸福に「」をつける
カップ酒のアルコールがぬける 墓石がぬれる
人生は抽象化された野球 いま二塁にいる
泣きたくなるくらいに尖らせて トンボの鉛筆
借り物の風で飛ぶ
室外機の風は眠たい
銀色の街灯が暖かいよる
サバンナの動物はみな痒そうだ 清浄な部屋で背中を掻く
サボテンの呼吸を聴く
街をさまよう 野良猫の流儀にしたがって
骨を焼く カイロだけが暖かい
夜が冷たくなったので ハリネズミを飼いたい
人類が滅びたあとのスーパーで 蛍の光が流れている
世界の終わりを眺めるのにうって つけの駐車場
夕日がさみしい 沈む夕日と同じ速度で 人は終わっていくから
グラニュー糖の重みをはかる夜
消しゴムを擦る音から苛立ちが聞 こえる
ピーマンは寂しい野菜 空っぽが詰まっている
自己を失ったビニール袋が飛んで いく
幸福はできかけの金平糖みたいに 曖昧な形をしている
難しい本の匂いだけ嗅ぐ
蚊を殺す手で蟻を逃がす
世界は無意味に意味に満ちている
水銀のふくらみかたで 死への距離を測る
手を洗うのは祈りに似ている
こんな夜は明朝体がやけに怖い
眠気を我慢する 脳細胞の死ぬ音がする
消灯のあとのうるさい静けさ
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